タイ 
7日目(3/8) -自転車旅本番開始&素晴らしい宿との出逢い-
PSゲストハウスの猫。かわいい。

 7時起床。今日はアユタヤーを出発する日。ここまでの6日間で初めての海外にも少しは慣れ,ようやく自転車旅が始まる。もう緊張などはとれ,食事も毎日美味しく食べることができるし,心配事も少なくなった。朝食はいつも同様オムレツ+ライス。今日は東へ行くという,ここで仲良くなった日本人大学生と話をしながら朝食をとっていると,パサポーンさんがやってきて「今日はどこへ行くの?」と聞いてきた。

 「アントーン(Ang Thong)です!」と応えると,彼女は顔色を変えて「ホント!?アントーンには友人がゲストハウスを経営しているの。1日150Bで朝食付き。オーナーは自分と同じく教師をしていて英語が通じるよ。あとで電話いれとくから。It's No.1 guesthouse in Ang Thong ! Don't stay in a hotel. 」とアントーンのゲストハウスを紹介してくれた。人によってはお節介と感じる方もいるかもしれないが,アントーンでの宿は決まっていなかったし,パサポーンさんの紹介なら間違いないだろう。パサポーンさんには宿の地図を描いていただき,さらにはアントーンの地図までももらい,PSゲストハウスを9時前に出発。スタッフは皆気さくで話しやすく,立地条件も良く,サービスも◎。(宿泊客は日本人が大半だったが)いつまでもいたくなるような素晴らしい宿だった。 タイの道路標識。国道には1km(もしくは2km)おきにある。

 さて,出発後はワット・ラーチャブラナとワット・マハタートの間を通り,国道309号線へ。主要国道なので交通量はかなり多いが,バイクレーン(路側帯)が2mくらいあるので,交通量が多くても危険を感じることはあまりない。アユタヤーの街から少し外に出るだけで辺りは水田や畑で北海道のようなのんびりとした景色が広がる。また,空気は良くないが,走っていると食堂や家の中,車から大人子供問わず声をかけてくれたり,小さな子供は「ハロー!」とぴょんぴょん跳びながら大声で声をかけてくれる。こういうのはすごく嬉しい。何といっても元気になれる。風も追い風というとことで非常に順調だ。気温は10時くらいまでは30℃程度で走りやすい。

 鳥はというと,水田地帯ということでアカガシラサギやコサギなどのサギ類が多く見られ(アカガシラサギはホントたくさんいた),スキハシコウ,電線にはオウチュウ,アカモズ,チョウショウバト,ベニバト,カタグロトビ,マダラチュウヒ(?)。そしてアントーンに入った頃,道沿いの水辺でヒメヤマセミをつがいで発見。名前の通り,ヤマセミをそのまま小さくした感じだ。カワセミ好きにとっては嬉しい瞬間。 広い路側帯なら自転車も安心。

 さて,今日の目的地であるアントーンまでの距離はアユタヤーから40キロ弱。気温に慣れるという意味でもこの程度で十分だろう。この旅(というか,僕らの旅)は距離を稼いでいろんなところを走るのが目的ではない。初めての土地では「あれもこれも」と欲張って回りがちだが,僕らは「今回はこの辺」と目的地を絞り,時間的,精神的に余裕を持った旅がしたい。

 アントーンは人口2万5千ほどの小さな街。特に観光地であるわけでもなく(当然地球の歩き方には載っていない),普通の自転車乗りならば昼食時に立ち寄る程度で終わってしまいそうな街。そんなアントーン市街に着いたのは12時前。早速,パサポーンさんが描いてくれた地図を頼りにゲストハウスを目指すが,地図で示された辺りに着いても「ゲストハウス」の印はどこにもなく,なかなか見つけることができない。「ちょっと行きすぎたかな」と思ったとき,向かいからバイクに乗ったおばちゃんが声をかけてきたので「この人に道を尋ねてみよう」と思い近づくと,おばちゃんは姫と何やら話をしている。 国道沿いののんびりとした景色。

 ・・・すると,このおばちゃんが,パサポーンさんの紹介してくれたゲストハウス「CHANG GUESTHOUSE」のオーナー「ポーンサワン」さんらしい!僕らが来るとの電話を受けて待ってくれていたのだろうか。バイクの後を追い,早速ゲストハウスへ向かう。どうやら少しだけ行き過ぎただけらしく,ちょっと戻って到着。そこは高床式の,タイの伝統的な家で,外にはゲストハウスの看板はない。これではわかるわけないよね。ポーンサワンさんのお母さん「ペンシーさん(75歳)」も出迎えてくれ,中へ案内される。木製の落ち着きがあるきれいな家。部屋は6畳くらいだが,決して狭くはない。バス,トイレは改築したらしく,清潔感いっぱい。また,水はただで飲んで良いらしい。これで本当に150B(しかも朝食付き)なのだろうかと疑ってしまうくらい文句のない宿だ。

 一通り説明を受けた後で,ポーンサワンさんは「今から私は学校へ行かなくてはいけないので,夕方また会いましょう。母(ペンシーさん)はここにいるから,英語はほとんど通じないけど遠慮しないで何でも聞いてね。」と言い,一旦別れる。荷物の整理をして一息ついていると,ペンシーさんが庭になっているマンゴーを切ってくれた。これがうまい!そして宿泊客が書いたゲストブックを見せてもらう。ほとんどが僕ら同様パサポーンさんの紹介できた人達らしく,日本人が多い。そこには「ポーンサワンさんのバイクに2ケツして,アントーン中を走った」「ポーンサワンさんの学校へ連れていってもらって,学園祭や遠足に参加した」など,みんなここを絶賛している。 雨が近づいて風が強い!

 また,ゲストブックには「ゲストハウスを経営する理由」が書かれていた。幾つか箇条書きされていたのだが,まとめてみると,「この家(ゲストハウス)は,以前はペンシーさんと旦那さんが暮らしていたのだが,旦那さんが亡くなってからはペンシーさんが独りで住むようなり(ポーンサワンさんの家族は同じ敷地内にある別の家で暮らしている),ゲストハウスを経営することにした。宿泊客とは色々な話をして盛り上がり,様々な考えや文化について聞いてみたいし,自分たちもこの国やアントーンのことを伝えたい。あとは,やっぱりお金が欲しいから(←もちろん冗談で書いているのだと思うが)。」となる。どうやら,この宿は非常にアットホームな素晴らしいところのようだ。

 英語はほとんど通じないペンシーさんだが,タイ語でたくさん話しかけてきてくれる。75歳には見えないほど元気なおばあちゃんだ。マンゴーと美味しいコーヒーをいただいたあとはシャワーを浴びて,とりあえず昼食をとりに出かけることに。ペンシーさんに「昼食を食べにいってきます」と告げ(タイ語の単語を並べただけだったけど何とか通じた),国道沿いにある食堂でセンミー・ヘーン(スープなし細麺)を注文。ヘーンは初めて。さっぱりしていて美味しいけれど,やっぱりナームの方がいいかな。ゲストハウスに戻ると,雲行きが怪しくなり,風も急に強くなった。雨の到来だ。タイで初めての雨。量的には大したこと無かったが,何だか嬉しい。雨が弱まると,ペンシーさんがアイドルや歌手のVCD(ビデオCD)を見せてくれた。日本では広まらなかったが,タイではビデオの他にVCDが広く普及しているのだ。 CHANG GUESTHOUSE。高床式の木造で通気性抜群!

 その後は「アユタヤー朝とビルマとの戦い」を描いたタイ映画の超大作「Queen Suriyothai」を一緒に見ることに。もちろん字幕などはなく,タイ語オンリーなのでほとんど理解不能。非常に興味深い内容なので,タイの歴史をもう少し学んでくれば良かったと後悔。まあ,そこはペンシーさんが逐一解説してくれる(もちろんタイ語99%)ので,どんな感じかは少しだけつかむことができるが・・・。この映画は3時間(CD3枚組ってことね)ということで,時間的に見てもかなりの映画だ。

 1枚目を見終えて16時近くになった頃,黄色いドレスを着たおばちゃんがやって来た。近所のおばちゃんだろうか,熟れていない緑色のマンゴーを持ってきて,「一緒に料理をしよう!」ということに。まず,マンゴーの皮をナイフで剥き,薄切りにする。タイの人は(というかマンゴーを剥くときだけかもしれないが)ナイフの使い方が日本と逆で,皮が固いからか,手前から向こうへナイフを滑らせるらしく,日本式に手前へ剥いていたら「危ない!」と言われ,直されてしまった。次に乾燥エビと唐辛子をすり鉢ですりつぶし,ニンニクのスライスと一緒に,甘辛いみそのような物と混ぜてソースを作る。このソースを先ほど薄切りにしたマンゴーに乗っけて食べるのだが,これが意外といける。熟れたマンゴーの方が美味しいけれど,サラダ感覚で食べられるのはいいね。でもたくさんは食べられないけど・・・。

 さて,突然家にやってきたこのおばちゃんだが,一体誰なんだろう??

〜(料理中のこと)
 僕がマンゴーの皮を剥いていると,おばちゃんがこの宿のゲストブックを持ってきて見せてくれた。僕らはさっきペンシーさんに見せてもらっていたのだが,渡してくれたのでもう一度見ることに。そして,そこにある「ポーンサワンさん」の名前を指さしていると・・・
 「My name !」
とおばちゃんが言うではないか。えっ!?この黄色いドレスを着たおばちゃんが,さっきバイクに乗っていたポーンサワンさんなの??姫も僕もてっきり近所のおばちゃんがやってきたと思っていたのでびっくり。お互い苦笑いするしかなかった(←英語が通じる時点で気づけってんだよね)。マンゴーを食べ終わったあと,ペンシーさんは映画の続きを見るかと聞いてきたが,ポーンサワンさんが「散歩に行きましょう!」というので,映画はまた今度にして一緒に出かけることに。 左から姫ポーンサワンさん、ペンシーさん、RANBU。

 ポーンサワンさんは50代の女性で,明朗快活なおばちゃんだ。道沿いにある木の実をとっては僕らにくれ,「Eat !」を連発。酸っぱいのもの,甘い物,咳に効くもの,いい匂いの葉などを楽しみながら散歩。この街では昨年の12月に大洪水があって水位は道路上1mくらいまで上昇したらしく,あちこちにその爪痕が残っている。みんな船に乗って移動していたようだ。大変だっただろうが,ポーンサワンさんの口からそのようなことは聞かれなかった。こういうところも「マイ・ペンライ(気にしない)」というタイ人の気質なのかな。

 しばらく歩いたところで夕食タイム。タイスキ(タイ風すき焼き)だ。テーブルの真ん中には穴が空いていて,そこに炭を入れる。その上に鉄板が中心に付いた鍋を置き,スープを注いで野菜を入れる。鉄板では肉(鳥や豚,レバーなど)を焼き,野菜と一緒にソースにつけて食べるのだ。ソースは真っ赤な「チリ」と,唐辛子がたっぷり入ったみそ系の二つ。チリの方が色は辛そうだが,実際にはみその方が辛い(唐辛子が刻まれてたくさん入っている)。さて,味の方はと言うと,「最高!(ソースはどっちもめっちゃ辛いけど)」。ビール(CHANG BEER)と一緒に食べるともう格別だ。このビールは「まずいが安い(そしてシェアはタイで1位になった)」と地球の歩き方に書いてあったのだが,決してまずくない。ちなみに,ビールの種類は結構あり,350mlの缶がコンビニや商店,スーパーで1本20B前後からといったところだろうか。 赤いところが甘い実。ポーンサワンさんお気に入り。

 実はタイで酒を飲んだのはこれが初めて。酒が大好きな僕だが,何故かこの6日間は酒無しだった。そのことをポーンサワンさんに言ったら「こんなに美味しいのに何で飲まないの?何で?何で?」と攻められてしまった。確かに,何で飲まなかったんだろう??暑い中飲むビールは本当に美味しい。タイスキ3人前とビール,水で155Bという安さもあり,幸せなひとときを過ごす。

 食事を終えたのは18時過ぎ。このまま家へ戻るのかなと思って歩き出すと,今度は市街地の方へ行く橋を渡るではないか。ちょっと遠くにはライトアップされたワットが見える。市場を横切りしばらく歩く。何があるんだろう?すると,着いたのはさっきライトアップされていたワット。どうやら,今日はここでフェスティバルをしているらしい(もちろん,観光客は僕らだけ。完全に地元のお祭りだ)。屋台が建ち並び,神社で行われる日本の祭りそっくりだ。ただ一つ,マイクを使い,大音量でフェスティバルの司会者(若い僧?)がしゃべりまくっていることを除いては。あとびっくりしたのはワットの派手なこと!外観が派手なのはわかっていたが,線香と花束を買い,中へ入ってみてびっくり。仏像の前で線香を供えて合掌したあと,線香と一緒にもらった「金箔」を黄金の巨大ブッダ像(高さ10mくらい)にくっつけるのだ。ものすごい数の金箔が既につけられていてまたびっくり。そして,若い人が多いのにもびっくり。日本との違いをまざまざと感じた。 CHANG BEER。右は水。

 そのあとは池でナマズに餌をやり(ワット内にいる魚は神聖だから食べないらしく,殖えまくっている。その数は数万??),奥の特設ステージで開かれている楽器演奏&歌を聴く。ここでびっくりしたことが。それは演奏の音量。マイクが楽器の近くにあり,ヴォリュームを最大にしているのだろう,耳が張り裂けんばかりの爆音にはポーンサワンさんも「It's too noisy !」。鉄琴,木琴,太鼓などの演奏が1時間ほど続き,そのあとは歌と楽器演奏が交互に行われる。終わる兆しが無く,21時半を回ったところで眠くなったので帰ることに。ポーンサワンさんに「いつまで続くの?」と聞いてみると,「日が変わるまで続くよ。」とのこと。ここの人のパワーに圧倒されたフェスティバルだった。帰りには屋台で美味しいセンヤイ・ナーム(太いきしめんのような麺)を食べる。その屋台の前には高校があり,こちらでもフェスティバルをやっていた。いやはや,若者のパワーもやはりすごいですな。帰宅は22時過ぎ。ペンシーさんが心配してくれていたのには胸が痛んだ(ポーンサワンさんが一緒とはいえ,もう少し早く帰ってくれば良かったなあ)。部屋には蚊帳がつけられていた (家は通気性がよく,窓を閉めても蚊帳がないととてもではないが寝られない)。ペンシーさんに感謝し,シャワーを浴びて23時に就寝。

 ポーンサワンさんやペンシーさんと共に,決して観光地ではない,アントーンの素顔をちょこっとだけ垣間見た一日。当初は明日出発の予定だったが,予定変更。連泊決定だ。走行距離は40キロ。

今日見た鳥
カイツブリ ヒメヤマセミ ベニバト チョウショウバト マダラチュウヒ(?) カタグロトビ アジアコビトウ コサギ ダイサギ チュウサギ アマサギ アカガシラサギ スキハシコウ アカモズ オウチュウ ムナオビオウギビタキ シキチョウ インドハッカ オオハッカ ツバメ スズメ


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