5時起床。隣のレストラン(24時間営業はこういうときありがたい)でスクランブルエッグ+トーストをとり,6時にゲストハウスをチェックアウト。何故こんなにも早く出発するのかというと答えは一つ,「交通量の少ない時間帯に走りたい」。外はまだ暗いので「大丈夫かな」と淡い期待を抱いて通りへ。・・・しかし,早朝といえどもさすがバンコク。交通量はすでにかなりのもの。とはいえ昼間に比べればよっぽどましだが,それでも怖いものは怖い。
歩道は段差がひどいので車道を走ることになるのだが,車がかなりのスピードで横すれすれを通過するため,ホント冷や汗もの。ファランポーン駅までの距離は5キロ程度。道自体複雑ではないのですぐに着くだろうと思っていたのだが,道路の横断が怖くてなかなか渡れず苦戦。タイの道路,信号はあるのだが左折車に関しては信号が無く,いつでも曲がることができる。だから,交通量の多い交差点で直進しようとするためには,中の車線に入るか左折車がいなくなるまで待つしかなく,後者をとるとなかなか横断ができない。
あとは犬に追いかけられたりもして大変大変。タイは犬がめちゃくちゃ多いのだ。ひもをつける習慣などはない(都市部でたまに見かけるが,そんなことをしているのは金持ちだけだろう)ので,ほとんどが野良犬のような感じだ。まあ,追いかけてくる犬はそんなにいないんだけどね。結局駅到着まで30分もかかり,この時点ですでに汗だく。
ちょっと休憩でも・・・といきたいところだが,列車の時刻が迫っているため,まずは構内のインフォメーションで切符購入の場所と,自転車を貨物車両に預ける場合のチケット売場を尋ねる。
切符購入の場所についてはインフォメーションの目の前にあったのですぐにわかったのだが,肝心の貨物チケット売場がわからない。
係員の方は英語で説明してくれるのだが,発車まで30分を切っているのと英語力がないのであまり理解できず,とりあえずアユタヤー行きの切符(3等は15B)を買った後,教えていただいた方へ行って,その近くにいる駅員に尋ねてみる。
英語は通じなかったがジェスチャーでチケット売場の場所を教えてくれ,そっちへ向かってみる(といってもすぐ向かい)。すつと,そこにいたおっちゃんが話しかけてきた。「自転車を載せたい」と言うと「こっちへ来い」と外の方へ連れていかれる。そこにあったのはトゥクトゥク。トゥクトゥクとは小型オート三輪のことで,近場の移動ならタクシーより安上がりの便利な乗り物。でも,これに自転車が乗るわけない。というか,それ以前に列車に乗りたいんだ!
「チケットが欲しいんだ!」と言うとおっちゃんはチケット売場(目の前にあったのだが)を教えてくれた。そこにあったのは巨大体重計(計量台)と,カウンターにお姉さんが一人。看板などはないし,駅の入り口そばにあるため,これは誰かに尋ねないとわからないなあ。そこで貨物チケット(自転車2台で140B。この料金は距離には関係ないのかも。これ以降も利用したのだが,毎回140Bだった)を購入し,改札口へ。出発時間まで残り10分。急いでホームへと向かい,貨物車両を探すと列車の後方に荷物を持った人が集まっている。駅員とジェスチャーで会話をし,自転車を載せる。列車に乗せた後は自転車が落ちないように紐でしばり,終了。とはいえ「落ちないように紐で縛る」と駅員さんは必死で教えてくれたのだがなかなか理解できず,迷惑をかけてしまった。
3等は自由席(1,2等は指定席)。ガイドブックには「3等は長時間の移動にはつらい」と書いてあったが,僕が乗った列車に関してはシートもそれほど堅くなく,長時間でもまあ大丈夫かなあという気がした。席についてしばらくすると列車は出発。10分ほど遅れての出発だが,この程度の遅れはこの国では「定刻通り」なんだろうなあ。
アユタヤーまでは2時間。ちょっと一息入れようか。そう思ってふと外に目をやる。すると,列車が動いているのに線路の上を大勢の人が歩いているではないか!確かに線路の上なら車は来ないし渋滞も関係ないから便利かも。通勤通学の人々や,線路のすぐ側で朝食を作っている人など,線路の通行が生活の一部になっている光景を見るとなんだかうれしくなってしまう。日本では決してありえないもんなあ。
さて,列車はどんどん進み,国際空港のある「ドンムアン駅」を過ぎると景色もがらっと変わって一気に田園風景が広がる。電線にはオウチュウやツバメが泊まり,水田にはアマサギやコサギ,アカガシラサギをはじめとしたサギ類やスキハシコウなどがたくさんいた。ゆっくり見られなかったのが非常に残念。あと,列車内には弁当売りのおっちゃんが何度も来る。こういう弁当は「危険かも」と思って初めは買えなかった(次に乗るときは買うんだけどね)。
アユタヤーが近づくと駅員のおじさんが「もう少しだよ」と教えてくれ,紐をほどきに貨物車両へ移動。アユタヤー到着は9時。駅員さんにお礼を言って自転車を降ろし,いざ中心街へ!ここアユタヤーは1350年から417年間にわたって「アユタヤー朝」が栄えた場所であり,度重なるビルマとの戦争で王朝が陥落した際に,ビルマ軍によって建造物の多くは破壊されたという。残った遺跡は世界遺産に登録され,観光客の多い街だ。
ところで,ここアユタヤーは東西約8キロ,南北約4キロの島を川がぐるりと取り囲んでいる。鉄道駅は島の東外側にあり,この街の中心地である島内へは駅の目の前にある船で渡るか,1キロほど南にある橋を渡って入ることになる。渡し船に自転車を載せられるかわからないので,橋を渡ってゲストハウスを目指す。交通量はバンコクに比べれば少なく,道路にはかなり広いバイクレーンがあるのでそれほど危険ではない。でも,排気ガスが多くて快適とは言えないかも・・・。
途中道を間違えていきなり遺跡公園の方へ行ってしまうが,初めて見る遺跡に感動し,象に乗っている人達(ほとんど日本人)を横目にのんびり自転車を進める。公園の内部を走る車は少なく,道も平坦なのでサイクリングには最適だ。実際,宿などで借りた自転車に乗っている人をあちこちで見かける。
ぐるっと遺跡公園を回って,ここアユタヤーで宿泊予定のゲストハウス「P.S Guest house」に着いたのは10時過ぎ。入り口にいた欧米人のおじさんに話をして(もちろん英語OK)中を見せてもらう。ファンの部屋(150B)に泊まりたいと伝えるが,案内されたのはエアコンつきの部屋(300B)。どうやら空いているのはここだけらしく,エアコンを使わなければこの部屋で150Bだという。ちなみに部屋は8畳くらいあるだろうか,バンコクで泊まったゲストハウスに比べると天と地の差だ。クローゼットもついている。バス・トイレは共同だが,清潔で悪くなさそう。これはもう即チェックイン。ただ,自転車は部屋の中に入れることができず,広い庭の片隅に止めさせてもらうことに。
ここでタイのトイレについて少し。ここのトイレは,写真を見てもわかるとおり手前に桶があり,中には水がはられている。タイ式のトイレでは,この水でお尻を洗う(要は右手に手桶を持ち,左手で洗うってこと)のだ。トイレットペーパーは使っても良いが,流すことができない(パイプが詰まってしまう)ので,その場合は備え付けのゴミ箱に捨てることになる。あとは,桶に張られた水ではなくて,シャワーが便器の横に着いているトイレもある。ウォシュレットと同じだと思えばタイ式のトイレも良いじゃないと感じるようになるかな。僕は,最初こそ抵抗感があったのでティッシュを使っていたが,一度手で洗ってみるとこっちの方が快適で,すっかりはまってしまった。ただ,お尻全体が濡れてしまうので「尻拭き用タオル」があると言うことなしかも(もちろん僕は面倒なのでそんなの使わなかったが)。
チェックインを済ませて荷物を運び終えると,タイ人のおばさんとさっきのおじさんが,僕らがチェックインした部屋について何やら話をしている。そう,この宿は高校の英語教師であるパサポーンおばさんが経営しており,このタイ人の方がそのパサポーンさんなのだ。どうやら,「エアコンルームにファンだけ使う人を泊めちゃあダメだよ」とおじさんに言っているようだ。ちょっと困ったなあ・・・と思っていると,ファンのみの部屋でチェックアウトする人がちょうど現れ,僕らはそちらへ移動することになった。この部屋にはベランダもついていて非常に快適!
一息ついた後は早速散策へ出かけることに。そうそう,このゲストハウスでは水がただで飲める。入り口にちょっと怪しい(?)シロップ入りの氷水が置かれているのだ。たくさん飲んで宿を出る。ちょうど昼時,遺跡を見ながら辺りをぶらぶらして,食堂でバミー・ナーム(15B)とペプシコーラ(タイではコカコーラを「コーラー」,ペプシコーラを「ペプシー」と呼ぶ)15Bを注文。先日はセンミー(細麺)だったので今日はバミー(中華麺)にしてみた。あっさりしたスープと相まってこれまた美味しい。それにしても,ジュースと麺が同じ値段だなんてびっくり。ジュースは贅沢なものなんだろうなあ。
食後は一旦宿に戻って休憩。ここで嬉しいことが。パサポーンさんと話をしていると,「自転車は階段の下に止めて良いよ」と言ってくれたのだ。親切なパサポーンさんに大感謝。さて,庭で鳥図鑑を見ながら休憩していると,タイ人の兄ちゃんが話しかけてきた。どうやら,この宿には主な「スタッフ」が4人いるようだ。オーナーはパサポーンさんで,他には欧米人のおっちゃんにタイ人の兄ちゃんが二人。で,この話かけてきたタイ人の兄ちゃんだが,日本語が少し話せる(日本人の彼女がいると言っていた)。その兄ちゃんが僕らに色々なゲームを持ってきてくれた。知恵の輪やビール瓶のふたを使ったゲームなど,僕にはできないものばかり。おっちゃんに「ばかね〜(日本語で)」とからかわれるが,嫌みは全くない。そんな中,後から来た日本人大学生二人も加わって,みんなでゲーム。楽しいひとときを過ごす。どうやら,このゲストハウスは日本人利用者がかなりの割合を占めているようだ。
日中はあまりに暑くて動く気もしないが,16時を回ると気温も少しずつ下がってきたので,ゲストハウスから徒歩5分程度のところにある「ワット・ラーチャブラナ(Wat Ratchaburana)」へ行ってみることに。入場料は30B。このような遺跡を見るのは初めてで,建築様式や雰囲気にすっかりはまってしまった。でも,初めにも書いたとおり,この町の建造物はビルマ軍によって徹底的に破壊されたのと,木造部分が多かったらしく,そのために保存状態があまり良くないのは残念だ。
写真をたくさん撮ったあとは,日も暮れてきたので島の北東部にあるナイトマーケットまで歩いていく。アユタヤーは大都市ではないから「マーケット」といってもそんなに大きくはないだろう。そう思いながら着いてみると意外や意外,「マーケット」の名に恥じない規模。食べ物はもちろんのこと,衣料,雑貨,CD,本,おもちゃなど,色々な店があって非常に賑やかだ。ぐるっとマーケットを回り,食事をとる。今夜は「鶏肉の唐揚げかけごはん(20B)」を注文。甘酢がかかり,下にはキュウリが敷かれていて美味しかった。そうそう,このマーケットに日本人の姿はなかったのだが,屋台からは「おいしいよ〜」「こんばんは〜」などと日本語で話しかけられもしたので,きっと日本人もたくさん来るマーケットなんだろうなあ。何と言ってもこの街は「日本人が多い」。観光客の半分くらい(それ以上?)は日本人ではないだろうか。
途中ファミリーマートで牛乳を買い,宿に戻ったのは20時過ぎ(ちなみに日の入りは19時前)。水を浴びて22時には床に就いた。今日は5時起きだったから疲れたなあ〜。
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