'02北海道 
9日目(9/15) -根室最後の日-

 予報は曇りだが朝から雨。仕方ないので,雨が止むまでテントの中でのんびりと過ごす。一人旅の時は文庫本などを持ってくるのだが今回は姫と2人なので持ってきていない。結局昼まで二度寝した。

 目を覚ますと,雨は小降りになっている。昨日はさんざん歩いたが風呂には入っていない。根室に滞在するのは今日までなので,レインスーツ,シューズカバーの完全装備をしたうえで市街地へと向かう。

 昼食は,この間も行った喫茶店「薔薇」で。今日は,前回姫が美味しそうに食べていた「ミックスエスカ(エビフライとトンカツのエスカロップ)850円」を注文。量は少ないが,プリプリっとした触感が最高!こんなに美味しいエスカロップを去年は食べなかったと思うと,何てもったいないことをしたんだとつくづく思う。

 食後はしばらくくつろいでいたのだが,そうこうしているうちにまた雨が降り出してしまった。しかも今度はかなりの大雨。とてもではないが店を出る気にはならない。カウンターでのんびりしていると,マスターが「食べる?」とサンマ丼を差し出してくれた。僕らの隣に座っている漁師のおっちゃんがこの店に持ってきたサンマを蒲焼きにして作ったらしい。エスカロップだけでは足りなかったのでありがたく頂く。

 これもまたうまいこと!脂がたっぷりとのった,普段は食べたことのないようなサンマのうまみが蒲焼きによって引き立てられている。これこそ根室のサンマ!!

 美味しい差し入れを頂き,雨が止むのを待つ・・・しかしなかなか止まない。すると,今度は

 「はいよっ」

 とアイスクリームが差し出された。知り合いからもらった牛乳を使い,試しに作ったら予想以上に美味しかったのでメニューにしたらしい。食後のデザート,待ってました!ということでこれも遠慮なくいただく。ジェラート風で市販のアイスなんかよりずっとコクと甘みがある!このおっちゃんはただものではない。気さくで話しやすく,料理の腕も抜群,そして鳥好き。こんな素晴らしい喫茶店に巡り会えただけでも根室に来てよかった。雨も一息ついたところで「今度は冬に来るよ!」と告げ,店をあとにする。

  オオセグロカモメ。

 時間は15時。ちょうど下の銭湯が開いたところだ。ちょっと早いけど風呂に入る。この熱い風呂,長くは入っていられないが薔薇の下にあるということもあって意外といいかも。

 風呂を上がったあとはポスフールで食料を調達。根室最後の夜はやはりサンマの寿司!あとは姫がまだ食べたことのないこっちの特産物,シマエビ(ロシア産だったけど・・・)を購入。これで今日の用事はおしまい。さあキャンプ場に帰ろう,と店を出ようとする。しかし・・・

 外は昼間以上の豪雨。雷鳴が轟き,近くで何度か落雷もしているようだ。とてもではないが自転車で走る気にはなれない。こういうのはしばらくすれば通り過ぎるでしょうということでしばし待つことに。しかし30分経っても止む気配はない。時間は17時を回った。暗くなるまであと1時間。暗い中は走りたくないので,雨が少し弱まり,雷も離れつつあるのを確認して出発することにした。

 雷嫌いの姫はかなり怯えている。 僕も「大丈夫だよ」とは言うが,周りに建物のない夕暮れに雷の鳴る中自転車で走るのは内心穏やかではない。それでもなんとか無事にテントに戻り,絶品のサンマ寿司を食べて床に就いた。


10日目(9/16) -今日も海の幸!-

 4時半起床。曇ってはいるが,空を見ると回復の傾向にあることがわかる。早めに朝食をとり,近くの林道まで朝の散歩に行くことに。狙いはエゾライチョウ。

 クマゲラも出るらしい林道だが,見られたのはゴジュウカラ,シジュウカラ,ヒガラ,コガラ,ハシブトガラ,エナガ,アオジ,カワラヒワ。亜種シマエナガは全体的に白っぽく,顔を正面から見るととてもかわいい。目的のエゾライチョウやクマゲラは見ることができず,残念。

 テントに戻り,5泊した根室市キャンプ場を発ったのは9時前。今日は厚岸が目的地。牡蠣が有名な厚岸,今日も海の幸が楽しめる!

夜シマフクロウが車とぶつからないようにするための旗。旗には「みんなのみち」と書いてある。  途中の休憩所にて。

 ルートは根室に来るとき通った国道44号を戻るという単調なもの。工事は相変わらず多く,路側帯のほとんどないところを100q近いスピードでかっ飛ばされるのは非常に不快だ。自転車がいるのは見えるんだろうから,せめてすれ違うときくらいはスピード落としてくれても良いのにと思うのはチャリダーのわがままだろうか?

 そういう人たちは,きっと「歩道もないところを走っている自転車が悪い」,「遊びに来ているやつにそんなこと言われたくないよ,こっちは仕事しているんだぞ」,「自転車で旅なんかしている方がおかしいんじゃないの?」とか思っているんだろうなあ。もしくは自転車なんて気にも留めていないかのどちらかだろう。ドライバー全てがそういう人でないのはわかっているが,自転車で旅をしていると「車だったら楽だろうなあ」と思うよりも「車なんて絶対乗るもんか!」と感じることの方が多い。車を全否定する気は全くない(生活するために必要な人もたくさんいるのは僕だってわかる)けど,自転車旅行をしていると「車第一主義の国」をいやというほど実感するのはつらい。

 さて,そんなことを考えながら走っていると11時に厚床到着。昼食をとって更に先へ。残りはあと3分の2。同じような道を走るのは正直楽しくないが,そんな気分も快晴の中走ればどこへやら,爽快に進む。

 途中厚岸の水鳥観察センターで小休憩をし,道の駅に着いたのは16時。ここは道の駅内の物産展で買ったカキなどを,その場で焼いて食べることもできる。ちょっと休んだあとは近くのポスフールに移動し,夕食のおかずを買う。今日は豪華に牡蠣,ホタテ,カルビ。あと忘れてはならないのがビールね。そう,今まで触れていなかったけれど,ここ北海道には沖縄のオリオンビールのような存在(?)の「サッポロクラシック」がある。麦芽100%の北海道限定ビール。値段は普通のビールと同じだが,味は間違いなく最高!こっちに来て僕らが飲むビールは全てそのクラシックだ。

 厚岸の中心地からキャンプ場までは約5q。この町は「市」といっても良いくらいの規模で,なかなか大きい。

牧草地。 これがそのクラシック。こっちでも売り出したら絶対買うのに。

 キャンプ場に近づき,ふと横の山を見ると30メートルくらいの距離にエゾシカが2頭。そう,この町はシカが多いのだ。道の駅でも見かけたし。そうこうしているうちに到着。「筑紫恋キャンプ場」は210円で,コインランドリーとバンガローを併設している。先客は郡山から来たライダーさん。今日は帯広から釧路湿原を回ってきたらしく,これから行く予定の釧路湿原について色々と話を聞く。ただ,その中には「釧路湿原で事故ってくしゃくしゃになっている自転車を見たよ。」という悲しい話もあり,気を引き締める。事故だけはしないようにしないと。

 そんな話をしていると日も落ち,辺りが闇に包まれた。すると,サイト内にお客さんが。それはエゾシカの群,その数10頭。テントのすぐ近くにまで現れて,ちょっとびっくり。でも,旅人には嬉しいお客さんだけど,地元の人にとっては厄介なだけかもね。シカによる食害,この辺りは結構ひどいのかもなぁ。

 さて,今夜のおかずはさっき買った牡蠣,ホタテ,カルビだ。そんなに食べられるの?と思うだろうが,そこはお腹をすかせたチャリダーにお任せを。牡蠣は生と網焼き,ホタテはバター焼き,カルビは味つきなのでそのまま焼く。どれも美味しい!(姫は「贅沢だけど,食べ慣れているカルビが一番美味しい」と言っていたが・・・。)久しぶりに走った疲れとぜいたくな食事,最高のビールに酔いしれて眠りに就いた。今日の走行距離は81q。


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