出発の日。少し前に高熱を出して寝込んだ影響か食欲がなく,少しでも食べると吐き気がするという,今までに経験したことのないような体調。とはいえ熱は収まり,その他に具合の悪いところはないので,姫と共に7時過ぎに家を出て福岡国際空港へ向かう。自宅から空港までは10キロないのでもちろん自走。この点で福岡空港は非常に便利だ。空港到着はチケット受け渡し前の7時50分。空港内には荷物を載せた自転車そのままで乗り込む。そう,今回は輪行袋なしの旅なのだ。
海外ツーリング関係のHPでは,「海外への飛行機輪行は自転車そのままでも全く問題ない」という文を結構見かける。ただ,「飛行機に自転車そのままで持ち込むのは,海外→日本の場合は問題ないとしても,国内の空港では一悶着あること間違いなし」と言う人もいて,実際のところどうなのかはわからなかった。出発前,旅行中共に,他愛のない質問に対していつも丁寧に答えてくださった「ビスタリ ビスタリ」のtaka-jiさんには「電話で航空会社に確認をとってもなかなかいい返事はもらえないようだよ」ということも聞いていた(taka-jiさんはそのまま自転車を持ち込む派の方)。
出発の数日前,ダメもとで今回利用するチャイナエアラインに電話を入れてみる。
すると,「ハンドルとペダルをはずしてくれれば(横に出っ張っている部分をなくしてくれれば)輪行袋に入れなくても良い」とのこと。
これはちょっと意外な答えだったので驚いた。輪行に関しては日本はかなり遅れているようだけど,最近は少しずつ理解されるようになってきているのだろう
(単に,そのまま持ち込む人が結構いるから「しょうがないなあ。」ということで認められているのかもしれないけど)。
そして,タイ国内の輪行に関しても,taka-jiさんから「列車では貨物車両にそのまま預けることができる。
バスにもそのまま載せられる。」と聞いていたので,輪行時以外は完全なお荷物である輪行袋なしの旅となったのである。
そんな経緯があり,自転車で空港に乗り込んだわけなのだが,入り口に入った途端インフォメーションの姉ちゃんやおっちゃんには何やらヒソヒソと囁かれたり,
自転車と共にエスカレーターに乗ったりと,空港内の移動も一苦労。しかも,出発ロビーに着いて驚いたのは荷物検査機に並ぶ人の数。
数百人は並んでいただろう。そんな中ロビーの片隅でハンドルとペダルをはずし,チケットを受け取ってその長蛇の列に並ぶことに。
なかなか順番は回ってこないが仕方ない。ところが,しばらくするとチャイナエアラインのお姉さんが「この間電話してきた方ですよね?
先にカウンターへ来てください」と声をかけてきた。どうやら,先日電話した際に「そのまま輪行」を許可してくださったお姉さんらしい。
荷物検査機を後回しにして先にカウンターで手続きをすることに。ここで心配なのは荷物の重量。エコノミークラスの重量制限は20キロ。
5,6キロのオーバーは見逃してくれると聞くが,実は先日の電話で「超過料金はちゃんといただきますからね。」と言われていたのだ。
姫の荷物と一緒に計量台に載せる。荷物の重量は・・・21.6キロ。さあ残りは自転車だ。
「1台だけで良いので載せてください」と言われ,ちょっとやばいかな・・・と思いつつ僕の自転車を計量台へ。すると,計量台が示した重さは「7.8キロ」。
「えっ??」
いくら軽量化が図られているキャノンデールの自転車とはいえ,キャリアをつけたマウンテンバイクでこの重さはおかしい。
しかし計量台が示す数字はやはり7.8キロだ。でもこれで二人の荷物総重量は合計40キロ以下。超過料金は払わずに済んだのである。
さて,気になるのは「何故計量台は7.8キロという数字を示したのか?」。その答えは姫が教えてくれた。
「前輪が計量台に載っていなかったよ」。
・・・気づかなかった。ま,受付のお姉さんも気づかなかったことだし,いいことにしよう(本来は荷物の少ない人を捜して,その人と同時にチェックイン(一緒に計量台に載せる)すれば,こんなこと気にせずともいいのだが)。
荷物を預けた後は出国審査。これは問題なく通り,機内へと乗り込む。今回はチャイナエアラインの台北経由便。
国際便はもちろん初めて。機内食は,朝の吐き気が収まらず苦戦するが(その味にも苦戦した)無理矢理押し込み,日本時間11時40分に台北到着。
とはいえ台湾と日本の時差は1時間なので現地時刻は10時40分。台湾とタイも1時間の時差があるので今日は1日が26時間もあることに。
得した気分だが,どうせ帰りの日は2時間損するから同じなんだよね。出発まで3時間ほどぶらぶらして,14時台北出発。
スチュワーデスの化粧はバリバリの中国系(?)になり,搭乗者も欧米人が半分以上を占めるようになって急に異国の雰囲気に。
機内では僕も姫も頭痛にやられ,苦戦。バンコク国際空港(ドンムアン空港)に着いたのは定刻の17時。入国審査を済ませ,空港内の両替所で両替をする。
「初日は一人5000円も両替しておけば十分でしょう」とtaka-jiさんには言われていたが,初めてなので一人1万円を両替する(約3500B)。
そして人の山でごった返す空港内を通過。さて,これからすべきことは「宿の確保」だ。今日の宿はバンコク市街でとる予定だが,
空港からバンコク市街までは約30キロ。この間の交通手段として自転車を持っていても可能だと考えられるのは・・・
@列車
駅は空港のすぐ隣にあり運賃も5Bと安いが,自転車を貨物車両に預けると貨物料金を取られ,且つバンコク市街の駅(ファランポーン駅)から宿泊予定の安宿街までも5キロ近くある。
Aエアポートバス
大型のリムジンバスで,大きな荷物を置くスペースがあると「地球の歩き方」には書いてある(が,自転車はどうだろう?)。料金は100Bらしい。
Bタクシー
到着ロビーから外に出るとタクシーの受付カウンターがあり,そこで運転手の名前と車のナンバーが書かれたチケットを渡してくれる。タクシーはメーター式で,料金はバンコク市内に下道を通って行けば200B程度+カウンターの手数料50B。有料道路もあるが,利用すればそれは客の負担。
この3つが挙げられる。今回は,値は張るが一番楽だと思われるタクシーを選択することに。
姫も僕も頭痛が収まらないので「早く宿に着きたい」の一心から早速外へ出ると・・・その先はむっとした空気が立ちこめる世界。
やはり35度は伊達じゃない。汗かきの僕は立っているだけで汗が噴き出してくる。
カウンターの列に並び,行き先を告げるとチケットを渡してくれたのでタクシーに乗り込むことに。
しかし,タクシーへ客を案内する(?)おっちゃんに,「ダメ」と言われてしまう。何を言っているのかよくわからなかったが,
どうやら「普通のタクシーでは自転車2台を載せることはできないから,大きいのが来るまで待っていろ」というようなことを言われたようだ。
そして,カウンターからもらったチケットをとりあげられてしまった。「地球の歩き方」には「カウンターでくれる紙は,
タクシーとの間で何かトラブルがあったときの連絡先などが書いてあるので,
色々な理由を付けてこれをとりあげようとする運転手もいるが応じないように」とあったのだが,それをあっさりと破ってしまったわけだ。
馬鹿です。でもそのときは状況がうまくつかめていないのと「早く宿へ着きたい」という気持ちで焦っていたので冷静になれず,チケットのことまで頭が回らなかった。
大体,普通のタクシーにだって,トランクを開けて載せ,後部座席も使えば自転車2台だろうが問題ないはず。ホント,冷静になれないときは馬鹿を見るね。
しばらく待っていると大きいタクシーが到着。バンタイプで,前輪をはずして載せると,余裕で入った。
運転手には「ワット(ワット(Wat)とはお寺のこと)・チャナソンクラム」と告げる。
バンコクには「世界有数の安宿街」とまで言われる「カオサン通り」という場所があるのだが,
そのすぐそばに,カオサンよりは静かだがこれまた安宿の集まる「ワット・チャナソンクラム」という場所がある。名前の通りチャナソンクラムという
寺の周囲にある安宿街だ。運転手は了解し,いざ出発!高速使用の旨を伝え,その入り口が見えるあたりまで来たときにあることに気がついた。
「メーターは??」
そう,運転手はメーターを使っていなかったのだ。「メーターをつけてくれ」と言っても
「あんたらこんなにでかい自転車二台も積んでるんだからメーターは使わないよ。500Bでどうだ?」と言ってくる始末。
そんなのに応じるわけにはいかないが,なおも「メーターをつけろ」と言うと入り口の手前でストップ。とはいえここで降りるわけにもいかない。
結局,早くどうにかしないとという焦りもあって,メーターの料金プラス100B(自転車の分)でOKと言ってしまった・・・。
後から考えればなんと馬鹿なことをしたと大反省。おっちゃんにチケット取られてしまったがためにこうなってしまったのだが仕方ない。
あとはこんな運転手相手にせず,すぐにタクシーを降りるべきだったね。いきなりの失敗でした。
高速に乗り,バンコク市街へと向かう。運転の荒さや歩行者の道路横断の仕方など日本とは大違い。改めて外国に来ていることを実感。
数十分でワット・チャナソンクラムに到着。カオサン通りが近いこともあってか,通りは賑やか。路地を進み,「Baan Sabai」というゲストハウスへ。
タクシー代は400B。早速フロントへ行き,空き部屋を聞くとツインの窓なしが270Bで,それ以外は空いていないと言う。とりあえず部屋を見せてもらうことに。
ここはオフィスをゲストハウスにしたらしく,きれいといえばきれいだが冷たい感じのする宿(ホントに冷たければいいのだが)。
部屋は6畳ほどで,ベッドが二つとファンがついているだけという超シンプルさ。バス,トイレ(洋式)は共同。
他のゲストハウスも回った方が良かったのかもしれないが,疲れのためにそんな気は起きず,チェックインすることに。
フロントに戻ると姫が欧米人のおっちゃんと話をしている。そのおっちゃんはどうやら世界一周したことのある自転車乗りらしく,
僕らの自転車を見て少しだけだがそのことを話してくれた。いるもんだねえ。
部屋の中に荷物と自転車を入れると残りのスペースはなく,ファンをつけてもかなり暑い部屋。とりあえず着替えをして水を買いに出かけることに。
通りへ出てセブンイレブンで購入。水は900mlのペットボトル(日本のとは違って半透明の容器)が5B前後,1.5リットルのペットボトル(日本のと同じ)が15B前後。
ちなみにタイにはセブンイレブン,ファミリーマート,ampmなどのコンビニをはじめとして車やバイク,電化製品や食料品など,
あらゆる分野において日本製品や日本の会社などを見ることができる。
宿へ戻ったあとは夕食をとることに。今泊まっているゲストハウスの下にもレストランはあるのだが,
蚊が多いとのことだったので隣のゲストハウス下にあるレストランへ行ってみる。客はほぼ100%欧米人(安宿街にあるんだからそれは当たり前か)。
とりあえずタイ料理で知っているものを食べてみようということでトムヤムクン(80B)+ライス(20B×2)を注文。
このときは「このくらいの値段なら手頃でいいねえ」と思っていたが,この考えは数日もすれば「こんなの高すぎて食べる気もしない」にまで変わってしまう。
さて,しばらくして出てきたトムヤムクンのお味はというと・・・
「苦い。」
タイの料理には香草が多く使われるが,この味に慣れていない僕らにとって,(特に)初めののうちは「香草=苦くて食べられたものではない」というイメージがなかなか払拭できなかった。もちろん,慣れてしまえば「タイ料理に香草は欠かせないかも」となるのだが。そんなトムヤムクン,食欲がないこともあって美味しく食べきることはできなかったが,酸味と辛さは疲れた体には効果あり。食後は部屋に戻ってシャワーを浴び,自転車のハンドルを元に戻した後すぐに就寝。
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