対馬の旅
1日目(5/2) -船内は大混雑-

 ベイサイドプレスからの出港時間は23時。乗客はかなりの数でちょっとびっくり。2等室をとったのだが、座るところすらないといった状況。 とてもではないが船内に自転車や荷物を持ち込むことはできないので甲板で過ごすことに。 毛布をもらってきて甲板で寝る。海は結構うねりがあるが、横になれば大したことはない。帰りもこんな感じなのだろうか。


2日目(5/3) -大雨のスタート-

 2時半過ぎ,船員の
「雨が降ってきたので中に入ってください。」 という声で目覚める。なにぃ,雨かよ。しかし,中へ入っても横になれそうなところがない。 船室は人が立つスペースもないほどびっしりとうまっているし,通路でさえも多くの人が隙間がないほどに横になっている。 とはいえ立っていると船酔い感に襲われる。結構な揺れだ。仕方ないのでびっしりと埋まっている中でも何とか人が通れる幅を作って通路に横たわる。 うぅ,気持ち悪い。船酔いをあんまりしない体質だと思っていた(これまで船酔いを経験したのは与那国行きの船くらい。 あれはすさまじかった)が,そうでもないらしい。

 対馬北東部の比田勝港に着いたのは定刻の朝4時半。しかしこの時間では真っ暗だし,動いてもどうしようもない。しかも外は雨。 7時までなら船内にとどまることができるので,時間ぎりぎりまで船内で一休み。

 7時下船。雨はまだ降っている。今日は昼過ぎまで雨らしい。ふぅ。出発から雨とは気が進まないけど仕方ないか,雨男だし。 ゆっくりと自転車を組み立て,出発は8時半。雨はいっこうに止む気配を見せず,むしろ強まる一方。雷鳴が辺りに響き渡る。 雷苦手なんだよなあ。安全な場所にいて稲妻を見たりするのは大好きなんだけど,外で走っているときの雷は怖くて仕方ない。

 出発してすぐに大粒の雨がたたきつけるように降ってくる。痛いくらいだ,すごい!雨の強さにちょっと感激。 側溝は瞬く間に川と化し,洪水を引き起こしそうな勢い。まさしく豪雨。感激しているどころではなくなってきた。 近くの川は完全に濁流。ちょっとやばいかも・・・。途中姫の自転車がパンクしたので近くのバス停でチューブ交換。 こういうときにスペアチューブがなかったりしたら大変だよね。雨の中のゴム糊はなかなか乾いてくれないし。

 しばらく雨宿りするが,いっこうに止む気配を見せない。今日の目的地は対馬北西部の佐護にある「鳥の観察塔」 (ここから10数キロ)なのだが,そこへ行くにはアップダウンがいくつかある。特に,一番きついのは比田勝から佐須奈までの坂道。 大雨ということもあって,上りより下りが特に怖い。後輪ロックして滑りでもしたら・・・。 国道を通っているのでトラックなどももちろん通り,超危険。幸い今日はこの雨で車も少ないようだ。不幸中の幸いといったところか。

実際に飛び出してきたら焦るだろうなぁ

 観察塔に着いたのは昼前。中にはすでに10人ほどの鳥屋さんがいる。この雨で観察小屋から出ていない人が多いようだ。 そりゃそうだよね,この雨じゃあ鳥も出ないでしょう。とりあえずは着替え。 カッパは着ていても汗をかくので時間がたてば濡れる(たとえゴアテックスでも自転車走行中の発汗量にはその機能が追いつかないようだ)。 そして最悪なことにサイドバッグの中身がずぶぬれ。今までこれで何度も痛い目に遭ってきたはずなのに,学習能力の無い自分・・・。 レインカバーはつけていてもキャリア側を完全にガードすることはできず,濡れるのは時間の問題だということは十分知っているのに。 特にオーストリッチのバッグはすぐに濡れる。着替えもほとんどが濡れてしまったが,まあやってしまったことは仕方ない。 とりあえず全て干してみる。この天候の中,どこまで乾いてくれるかなあ。

 今回はこの観察小屋をベースに回るつもり。トイレ,炊事場共にあって,そしてこの場所は鳥見のポイントである佐護にある。 うってつけの場所だ。

 さて,一息ついた後は昼食。・・・しかしここでこの旅最大のハプニングが起こる。 ご飯を炊こうとこの間の沖縄から登場したスノーピークのガソリンストーブに火をつける。すると・・・何かいつもと違う。 火がなかなか安定しない。どうしたのかな?と思った矢先,

 「ボウッ!」

ガソリンストーブが炎上した。

 炎は1メートル近まで燃え上がる。燃〜えろよ燃えろ〜よ〜♪・・・じゃあなくてマジやばい。原因はガソリン漏れ。 燃えたぎる炎がおさまるまで1分はかかっただろう。近くに燃えやすい物はなく,人もいなかったので騒ぎには至らなかったが, ちょっと間違えれば大惨事になりかねない。前回の沖縄で初めて使ったときもガソリン漏れはしたが,今回のはそのときとはどうも違うようだ。 分解してリペアキットを使ってみても直らない。その度にストーブは炎上。だめだ,終わった・・・。 いきなり初日から「自炊不可」という局面にさらされることになった。しかしここは多くの人が泊まっている観察小屋。 誰かに貸してもらえば何とかなるか・・・。

 昼を過ぎると雨も一段落,それと同時に小屋にとどまっていた鳥屋のみなさんもここぞとばかりに出撃していく。 僕たちも近くを散策してみることに。雨が止むといい感じ。というかさっきまでの雨は何だったんだ。 今日はここ対馬に僕の所属するサークルのみんなが来る。同時期に対馬で合宿があるのだ。 彼らは大人数なので佐護の北にある「井口浜キャンプ場」をベースにするのだが。

 観察小屋の周りをぐるっと歩いて回ってみる。近くを流れる川は完全に濁流で,鳥の気配無し。 こういうときって意外なやつがいたりすることもあるんだけどね。農耕地にはアマサギとミヤマガラスが多い。 商店で買い物をして戻ってくると,観察小屋のすぐ側でキマユホオジロが。おぉ,初ヒットだ。黄色が鮮やかでかっこいい。

 さて,小屋に戻ると姫は一休みしたいというので,僕だけで(今度は自転車で)散策に出かけることにする。 ちょっと足をのばしてサークルのみんなが泊まる井口浜キャンプ場まで行ってみよう。 ついでに,彼らに連絡取って火器があまっているようだったら貸してもらおうという考えだ。観察小屋周辺ではauは圏外。 ドコモは入るようだが。どこかに電波の入る地域があるといいんだけど。 公衆電話は近くの商店にあるのだが,そこから電話した時点ではsetifer達はまだ船の中だったようでつながらなかった。

 すぐ近くに井口浜へのショートカットルートがあるので行ってみる。ここを使えば井口浜まではたったの4キロ。 しかし近いということは・・・激坂が待ち受けてるんだよね。

 予想通りの荷物有りでは上れそうにない坂。これは冗談抜きできつい。上りは2キロ無いが,とてもじゃないけど自転車で上るような坂ではない。 一回で十分。まあその分下りは楽しいけど。車なんて滅多に通らないから気持ちいいし。

 下りきると分岐点がある。そのすぐ側に井口浜キャンプ場はあるのだが,初めそれに気づかず違う方向へ行ってしまう。 海岸沿いに北西へ。またもやかなりの上り坂。「こっちは違う道だよなぁ」と思うのだが,もしこの先にキャンプ場があって, 手前で引き返したらもう戻りたくないので「絶対に違う」とわかるまで進むことに。すると途中でコウライキジが目の前で飛び立つ。 ちょっとはいいこともあるじゃん。

 しかし,数キロ進むと展望台があり,予想通りこの道は間違いであることが判明。下りを思いっきり楽しんでさっきの分岐点へ着く。 辺りをよく見れば,反対側になにやらちょっとしたスペースと小屋みたいなのがある。ひょっとすると・・・

 そう,その「ちょっとしたスペース」がテントサイトで「小屋みたいなの」が無料で使えるというバンガローだったのだ。 ちょっと見は「廃屋と庭」といった感じ(言い過ぎ?)であまりにもキャンプ場らしくなかったために全く気づかなかった。ふぅ。 時間的にもサークルの皆は未だ到着していないので,ここで少し休憩をとってから帰ることに。帰りはさっきの道ではなくて佐須奈方面に抜ける道をゆく。 こっちの方がまだましな道だろう。

 そう思ったのだが,そうでもなかった。傾斜はそこそこあり,そして何より工事中のため砂利道なのだ。むしろ危ない。荷物積んで下りでもしたら即転倒間違いなし。 もう自転車では井口浜に行く気はしない。帰り際佐護の公衆電話からサークルの後輩であるsetiferに電話してみると,ちょうど厳原 (対馬南部の街で,対馬の中心地)に着いたところだという。夜時間があったらこっちに寄ってくれるということなので, もし火器があまっているようだったら貸してくれないかと頼み,電話を切る。

 観察小屋に戻る途中では,道端で休憩していたおっちゃん3人組がいたのでお辞儀をして通り過ぎると
「おい,止まれ。」
と声をかけられ立ち話。今日は観察小屋に泊まる予定だと言うと
「この先の棹崎公園にキャンプ場があって,そこにはシャワーもあるよ。」
と言われる。ホント?観察小屋にはさすがにシャワーまでは付いていない(井口浜には水シャワーがあるけど,あそこへは自転車では絶対に行きたくない!) ので,その情報がホントだとしたら行く価値あるかも。棹崎公園は観察小屋から7キロほど。 今回行く予定の「対馬野生生物保護センター」のすぐそばにあるので,そのついでに寄ってみよう。

トビ(?)の羽根をくわえたヨシキ君

 小屋に戻り,日も落ちたのでさあ夕食。火器をどうしようか迷い,隣にいる方にお願いしてみると快く貸してくださった。 唐津で中学校の先生をされているMさんで,小学1年生の息子と,鳥仲間と一緒に来ているそうだ。Mさんの息子,ヨシキ君は人見知りしないやんちゃな男の子。 色々と話しかけてくる。びっくりしたのは,彼が鳥の名前を僕以上(それは僕が知らないだけでもあるのだが)に知っているということだ。 しかも,名前だけじゃなくて図鑑を見ればそれが何という鳥なのかまで言い当てるすごさ。いやあびっくり。お父さんと一緒にたくさん鳥見てるからだろうなあ。

 でも,よく考えたら小学校低学年くらいのときの記憶力ってかなりのものなんだよね。小さいときに海外へ行けば大人よりもすぐに現地の言葉が使えるようになるし, 僕自身,小さい頃はいろんな生き物の名前覚えていたもんなあ。実家には(子供用のだけど)生き物図鑑が一通りそろっていて, 毎日のようにそれを眺めては覚えていたからね。いつの間にかそのほとんどを忘れてしまったけど。

 どうやら僕は小さい子になつかれやすいらしい。決して「子供が大好き!」ってわけではないんだけど,特に旅先では子供の相手をすることが多いような気がする。 もちろん,嫌いではない,というか,自覚していないだけで実は好きなのかも。 食後はMさんに用事があり出かけていったので,姫と僕でヨシキ君と観察小屋の中を一緒に走り回ったりして遊んだ。 途中でsetifer,じぇら,はっしーさんが顔を出しにやって来てくれた。サークルの方で使う火器には何とか余裕がありそうということで, じぇら所有のガスバーナーを貸してもらえることに。ありがとう,じぇら,感謝の一言に尽きます。

 彼らが帰った後もしばらくの間ヨシキ君と遊ぶが,9時を回ってもMさんが帰ってこないので, 先にヨシキ君を寝かせる(いくら元気な子でもこのくらいの年の子って親がいないとなかなか寝付けないものだよね)。 さてと,今日は最悪のスタートだったけれど,いい出逢いもあったし,まあまあの一日だったかな。明日以降に期待して眠りに就く。 外はまた雨が降り出したようだが,ここは建物の中。熟睡。

今日見た鳥
アオサギ ダイサギ チュウサギ アマサギ カルガモ トビ コウライキジ(♂) ツバメ ヒヨドリ キマユホオジロ  シジュウカラ カワラヒワ スズメ ミヤマガラス

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