カワセミを見ることができた日は何だかラッキーな気分になります。 鳥は,幼い頃から比較的身近な存在だった。朝早く「デデポッポー」と鳴く謎の鳥。家の庭にやってくるスズメやその他の鳥たち。メジロ,ホオジロ,カワセミなどは小学校に上がる前から名前だけは知っていたし,図鑑で色々な鳥を見て楽しんでもいた。

小学生の頃のめり込んでいた切手収集では,当時「水辺の鳥シリーズ」という記念切手が発売されていて,特にアカショウビンの切手を見てはその美しさに憧れていた。そんな私は中学生になると,親や友達の影響もあってか釣りにはまりだした。休日になれば近くの川や海で釣りをする日々。そんなある日,いつも行く川での出来事だった。目の前を,コバルトブルーの鳥が飛び去ったのだ。

「カワセミだ!」

写真では何度も目にしていたカワセミ,それを実際に見たときの感動は今でも覚えている。しかし,中,高の頃の鳥に対する興味はその程度のもの。そして,大学へ入学するとアウトドア系のサークルに入部。そこは昆虫や植物,鳥や釣り,ダイビングなどの分野に別れて幅広く活動をするサークル。釣りにはまっていた私は友人を誘って釣りがメインで入部したのだ。 そのとき「鳥をやってみるのもおもしろそうだなあ」とは思ったものの,やはり,当時釣りキチだった私にとっては「鳥もいいよね」と思う程度でしかなかった。

福岡では春秋に通過するノビタキ。 そうこうするうち,鳥見によく出かけるサークルの先輩と親しくなって,2年になると「私も鳥見をしてみよう」と思うようになった。そんな感じで始まった私の鳥見生活。初めのうちは,先輩と一緒に近くの山や干潟へ出かけていた。とはいえ,それは月に1,2回程度。当然シギ・チドリ類を見ても識別はできないし,当時は,カワセミなど一部を除いて「地味な鳥」という印象しかなかった水辺の鳥に興味は湧かなかった。

そのころ好きだったのは派手な鳥。小学生の頃からの憧れであるアカショウビンは言うに及ばず,猛禽類やオオルリ,キビタキなど,ぱっと見で印象に残る鳥に憧れていた。「山野の鳥の方が派手でかっこいいし,カモやシギチなんて覚える気もしないや」というのが大学3年(2001年)夏までの私だった。

しかし,3年の秋になると状況が一変する。その頃鳥に興味を持ち始めた姫に,「水鳥の説明も少しはできればなぁ」という気持ちが芽生え,今津干潟や和白干潟などにも二人して頻繁に出かけるようになった。不思議なもので「見よう」と思って見ると,これまで目立たなくて地味に思えていた水鳥たちが,私の目には,今までとは全く別物に映りだした。

アオアシシギの秋を告げる「チョーチョーチョー」,淡水性シギの地味な中にある派手さ,様々な採餌行動,そしてそんな水鳥達が利用する水辺の環境。今では,山よりも干潟などの水辺へ出かけることの方が圧倒的に多くなっている。

お馴染みのスズメ。結構可愛いですよね。 話は変わり,私が鳥見をする際の主な交通手段はもちろん「自転車」。ところが,自転車という乗り物は鳥見に適していない点がいくつかある。第一に挙げられるのは,なんといっても「鳥が逃げやすい」ということだろう。車のような無機質なものの中に入っていれば鳥たちはさほど警戒しないのだが,自転車に乗った人間が,鳥を見つけて「あっ!」と思ってブレーキをかければ驚かれるのは当然といえば当然。やっぱり,車の方がいいのだろうか?それとも,バスや電車+徒歩?

車に乗っての鳥見は,前述したように自転車よりも鳥を驚かすことはなく,人間自身も効率よく見ることができる。疲れることもたいしてない。ちょっと遠くへ行くのも楽々。そう考えると,やはり車での鳥見が一番かもしれないし,事実,車で鳥見をされる方が圧倒的に多いのも当然のことだろう。私自身,その便利さは何度も体験している。

しかし,それでも私は自転車派。意地を張っているように見えるかもしれないが,「目的地までさっさと行って,目的の鳥を見ましょう」というスタイルでは,私はどうしても鳥見を満喫することができない。排気ガスがどうのこう,環境破壊がどうのこうと言うわけではないし,車で探鳥をする人たちと相容れないと言っているわけでもない。 でも,私は楽して探鳥地まで行き,鳥を見るだけでは何となく物足りない。そこへ行くまでの何気ない道や田んぼ,畑,川,海,空,風,季節の香り,そんなものを感じ,そして汗を掻きながら自転車を漕いで探鳥地へ行くこと自体が楽しい。そして,そうやって辿り着いて見た鳥は,車での探鳥とはひと味もふた味も違って見える。

羽繕い中のオバシギ。 そう感じる一番の理由は「体を使う」ということだと思う。もちろん車で探鳥する人だって,目的地に着いてからは山を登ったり草原や農耕地を歩いたりするのはわかっている。そんな鳥見をしたときは,車派の人達だって「今日は疲れたけど,気持ちよかったなあ」と感じたりするのではないだろうか?もしそうだとしたら,次の休みにでも,自転車で近くの探鳥地まで行ってみませんか?もっと色々なものが見えてくること間違いなし!

電車やバスで回るのもありだが,そうなると時間的な制約が大きくなりすぎる。自転車なら,家に帰る体力さえ残しておけばOK!充分な運動になるし,何よりご飯が美味しく食べられるのがいいところ。調査研究や仕事で鳥を見るならば車を使うのは当然かもしれないが,趣味のレベルでは,効率最優先が一番良いとは限らない。今後も,自転車鳥見を続けていきたい。

上記文章を書いたのは学生だった2003年。10年以上経っても「自転車で鳥見」という考え・スタイルは変わっていない(2014/11/23)。